案内文章

高度成長期に突入した1960年代は、地方私鉄の廃線が次々と続いた10年間であった
「終焉の地方私鉄」を全国に追い求め、
空腹と闘った旅で撮り溜めたネガ。
そんなネガを掘り起し、地方私鉄の1960年代
回想してみました。

2018年4月25日水曜日

書評の紹介

facebookのグループで「地方私鉄 昨日・今日・明日」を管理されている方の「地方私鉄1960年代の回想」書評を紹介させていただきます。4月10日の配本直後にfacebookに投稿された書評と写真で、ありがとうございました。

[4月14日FB投稿より]
待望の写真集「地方私鉄1960年代の回想」をついに手に入れました。正式の発売日は20日のようですが、書泉グランデでは、すでに店頭に並んでいます。
著者はFacebookでもおなじみの風間克美さん。
ここには32路線が収録されていますが、そのほとんどは1960〜70年代のモータリゼーションの波の前に姿を消した路線で、今もその一部が何らかの形で残っているのは上田丸子電鉄、熊本市交通局、熊本電気鉄道の3社に過ぎません。

私が地方私鉄を積極的に回るようになったのは1970年代後半で、残念ながらこの本に収録されている路線の大半を私は見ることができませんでした。
しかし、この本のページを繰っていると、ありありと当時の地方私鉄の息吹を感じることができます。
筆者も書いておられますが、この本には北海道の私鉄が収録されていません。当時の北海道には多くの炭砿鉄道に古典蒸機が健在だったわけですが、筆者はすでに多くの同好の士が記録されている北海道の蒸気機関車を、ご自分の撮影の対象から、あえて除外しました。限られた時間の中で、撮影対象を絞り込んだ思い切りがこの写真集に結実しています。

もう一つの思い切りといえば、この写真集には、車両本位の記録写真がとても少ないのです。筆者は模型製作の資料として写真撮影を始めたとおっしゃっていますから、実際には車両の記録写真も多数撮影しておられるでしょう。しかし、この写真集に収められている写真は、生活の中に生きる鉄道を記録した写真がほとんどです。そこには当時の人々のありのままの生活が鮮やかに切り取られています。

今も、鉄道を写真の対象にする方の中には、人物が写り込むことを極端に嫌う方がいますが、鉄道は利用者あってのもの。今私たちが撮っている写真を50年後の人が見たとき、どんな写真を面白いと感じるのか、そんなことも考えさせられます。
地方私鉄を愛する方、すべての方に手にとっていただきたい写真集です。 以上




ここで投稿にお答えしますと、美しい車両の写真は駅や車庫で沢山撮ってあります。軽便などは面白いのでブログでも結構使っていますが、どんな車両写真も資料写真に過ぎません。ということで今回の本では、車両写真は投稿にあった通りで極力避けてあります。

私はその路線の車両を解剖するがごとく全形式の写真を羅列(暴露)し、履歴、構造特徴の解説つきをFacebookで見ると一辺に熱が醒めてしまいます。模型製作に車両写真は役立ちますが、模型は今やっていないので車両写真と解説は原典(台帳)となる鉄ピクの「私鉄車両めぐり」が手元にあれば十分です。

その車両がどんな風景やどんな生活の中を走ってきたのか、車両が生きていた時代を見たいです。人物に例えれば、スタジオで撮った美しい人物よりも、日常の生活感溢れる人物を見たい。

ブログでも紹介しましたが、茨城の水浜電車もこれまで車両写真ばかりで、その魅力に気がつかなかったのですが、友人の写真で素晴らしい水浜電車の世界を50年後に初めて知りました。


見開きで掲載予定であった画像を初公開します。熊本電鉄 早朝の菊池駅 1967.3.6
ページ数の関係で下巻に掲載できなかったのが残念です。
見開きに使うにはこれでも車両が大き過ぎです。

7 件のコメント:

Cedar さんのコメント...

FBの投稿もそれに対する貴コメントも、いちいち納得共感いたします。
でも、高架化や柵で囲われた今の鉄道で同じように撮れるのか?鉄道と利用者の距離感が変わってきたのか、と感じる昨今です。

katsu さんのコメント...

Ceaderさん
昔と今とでは全く環境が変り昔と同じには撮れないでしょう。
線路には入れない、利用者は撮れない、人工的な施設、何もかもが変わってしまいました。

でも先日の写真展で見た駅の雑踏風景は素晴らしかった。
夕暮れ時、スローシャッターで人々の顔をぼかす。
デジタルで、きっと何枚も何枚も撮った中の1枚でしょう。
以前から朝のラッシュ風景を撮りたいと思っていました。

esehoku さんのコメント...

いつも貴重な記事をありがとうございます。
私は関東某県在住なのですが、今ちょっとグランデまで行く時間が取れないため、地元の本屋さんを回ったのですが…
結構大きな某書店でも店頭扱いがなく、注文となってしまったのですが、それも問屋さんに入るまで1週間くらいかかるとか…
まさかここまで手に入りにくいとは思いませんでした…(^_^;)
確かに一般的な図書と少し違うのでしょうか…?
店員さんも、検索と注文に少し手間取っていましたが、やっぱりなんとしてでもグランデまで行くべきだったかなぁ…と、ちょっと歯痒い思いです。
とはいえ、これで間違いなく入手でき、私の愛読書として書棚に収まるわけですから、楽しみに待ちたいと思います!

chitetsu さんのコメント...

書評、Cedarさん同様納得であります。
時代が変わって同じような写真が撮りにくくなってはいますが、いまでも工夫次第で色々な楽しみ方がありますね。
私も形式写真は随分撮ってきて、いま仕事では役立っていますがやはり、鉄道と人々とのつながりの記録のほうが楽しいですね。
Katsuさんのような写真を真似して撮っていますが、なかなかうまく撮れません。

藤枝の郷土館にも本は入荷して平積みになっているそうです。

katsu さんのコメント...

esehokuさん
一般書店では入手しにくく申し訳ありません。
注文ありがとうございます。

鉄道ピクトリアル最新6月号に掲載された本誌の広告によれば
本誌のネット通販はIMON通販店がメインになっています。
http://www.imon.co.jp/webshop/index.php?main_page=product_info&products_id=159013

また書泉の通販はこちらです。
https://www.shosen.co.jp/shop/products/detail.php?product_id=3683888

鉄道ピクトリアルの電気車研究会のサイトに、書店購入の案内があります。

http://www.tetsupic.com/books/chihoushitetsu/index.html

katsu さんのコメント...

chitetsuさん
模型製作に役立つ形式写真は目的があり良いと思います。
それぞれ目的により写真の撮り方が変わってくるのは当然と思います。
先日、chitetsuさんが撮られた筑豊電鉄の駅風景は印象的でしたね。
今の時代は、ほんとうにこういうのを撮るのが難しいですね。
藤枝の郷土館、入荷していますか、嬉しいですね。
問い合わせがいろいろ入って来ているのですが、まだ良い答えができていません。

中嶋康博 さんのコメント...

はじめてコメント申し上げます。
本日偶然ホームページにたどりつき、人々が電車に乗降している写真をみているうちに胸がいっぱいになりました。

1960年代の町並みや田園風景のなかに、斯様なつつましげな佇いの軽便鉄道が添えられているだけで、何かしら電車がもう一種のタイムマシンにしか見えなくなって参りました。
星空の真ん中にプラネタリウムが据えられてあるように、もはやその電車が、今は喪われた風景を現出させ、構成しているかのような錯覚すらを覚えます。

そして御説の公刊趣旨がすばらしく、鉄道ファンではありませんが、また普段は古本ばかりいじっておりますが、即決注文させていただいた次第です。

戦前の東京を写した師岡宏次氏の写真集や、昭和20〜30年代の奈良大和路を記録した入江泰吉氏の写真集とともに、永く愛蔵したいと存じます。ありがとうございました。